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大阪地方裁判所 平成8年(ワ)1984号 判決 1998年2月19日

フランス国パリ七五〇〇八アヴニュモンテーニュ五四

第一事件・第二事件原告

ルイ・ヴィトン・マルチエ

右代表者

イヴ・カーセル

右訴訟代理人弁護士

小野昌延

芹田幸子

松村信夫

大阪市西区新町二丁目一二番九号

第一事件被告

株式会社アレンジ

右代表者代表取締役

國田宇弘

大阪市城東区今福南四丁目一四番二-五〇一号

第二事件被告

JOYⅡこと

國田宇弘

右両名訴訟代理人弁護士

磯川正明

相内真一

深井潔

第一事件被告訴訟復代理人、

第二事件被告訴訟代理人弁護士

東重彦

主文

一  第一事件被告は、別紙イ号目録(1)ないし(4)、ロ号目録(1)ないし(3)、ハ号目録(1)ないし(3)、ニ号目録(1)ないし(3)、ホ号目録(1)ないし(3)、ヘ号目録(1)ないし(3)の各鞄類を製造し、販売し、販売のために展示してはならない。

二  第二事件被告は別紙イ号目録(1)ないし(4)、ロ号目録(1)ないし(3)、ハ号目録(1)ないし(3)、ニ号目録(1)ないし(3)、ホ号目録(1)ないし(3)、ヘ号目録(1)ないし(3)の各鞄類を輸入し、販売し、販売のために展示してはならない。

三  第一事件被告及び第二事件被告は、別紙イ号目録(1)ないし(4)、ロ号目録(1)ないし(3)、ハ号目録(1)ないし(3)、ニ号目録(1)ないし(3)、ホ号目録(1)ないし(3)、ヘ号目録(1)ないし(3)の各鞄類を廃棄せよ。

四  第一事件被告は、第一事件・第二事件原告に対し、金七六万五六〇〇円及びこれに対する平成八年三月六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

五  第二事件被告は、第一事件・第二事件原告に対し、金一一八九万六五八七円及びこれに対する平成九年九月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

六  第一事件・第二事件原告の第一事件被告及び第二事件被告に対するその余の各金員請求を棄却する。

七  訴訟費用は、第一事件・第二事件を通じ、第一事件・第二事件原告と第一事件被告との間においては、第一事件・第二事件原告に生じた費用の五分の二を第一事件被告の負担とし、その余を各自の負担とし、第一事件・第二事件原告と第二事件被告との間においては、第一事件・第二事件原告に生じた費用の五分の二を第二事件被告の負担とし、その余を各自の負担とする。

八  この判決の第一項、第二項、第四項及び第五項は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  請求の趣旨

一  第一事件

1  主文第一、第三項同旨

2  第一事件被告(以下「被告会社」という)は、第一事件・第二事件原告(以下、単に「原告」という)に対し、金一二九万六〇〇〇円及びこれに対する平成八年三月六日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  仮執行の宣言

二  第二事件

1  主文第二、第三項同旨

2  第二事件被告(以下「被告國田」という)は、原告に対し、金二〇八三万一三七〇円及びこれに対する平成九年九月三日(請求拡張の申立書送達の日の翌日)から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  仮執行の宣言

第二  事案の概要

一  事実関係

1  原告は、別紙原告商品目録(一)(1)ないし(4)、同(二)(1)ないし(3)、同(三)(1)ないし(3)、同(四)(1)ないし(3)、同(五)(1)ないし(3)、同(六)(1)ないし(3)の各鞄類(以下、順に「原告商品(一)」「原告商品(二)」「原告商品(三)」「原告商品(四)」「原告商品(五)」「原告商品(六)」といい、総称するときは「原告商品」という)をフランス国内で製造し(原告の製品は、いずれもライセンス契約による日本等での製造はしていない)、原告商品(一)を「サンジャック・ショッピング」、原告商品(二)を「サック・ア・ド」、原告商品(三)を「サック・デポール」、原告商品(四)を「プチ・ノエ」、原告商品(五)を「ランドネ」、原告商品(六)を「スピーディ」の各名称で、原告の日本における子会社の直営店六店及び特約店二八店において(のみ)日本国内で販売し、品質の保持管理、商品及び商品表示の信用維持に努めている(争いがない。但し、各商品の名称については甲二七の1)。

2  被告國田は、平成七年九月から別紙イ号目録(1)ないし(4)、ロ号目録(1)ないし(3)、ハ号目録(1)ないし(3)、ニ号目録(1)ないし(3)、ホ号目録(1)ないし(3)、ヘ号目録(1)ないし(3)の鞄(以下、順に「イ号商品」「ロ号商品」「ハ号商品」「ニ号商品」「ホ号商品」「ヘ号商品」といい、総称するときは「被告商品」という)を輸入し、平成七年一〇月初めから販売している。また、被告会社は、右輸入された被告商品を被告國田から仕入れて、同年一一月中頃から、通信販売のための広告において、イ号商品に「サン・ジャック タイプ」、ロ号商品に「サック・ドア タイプ」、ハ号商品に「サック・デポール タイプ」、ニ号商品に「プチ・ノエ タイプ」、ホ号商品に「ランドネ タイプ」、ヘ号商品に「スピーディ タイプ」の各名称を付して、これらを販売している(争いがない。但し、原告は、被告会社による被告商品の販売開始時期につき「平成七年一〇月頃」と主張するが、乙第一ないし第一五号証によれば、被告会社主張のとおり平成七年一一月中頃と認められる)。

なお、原告は、被告会社は被告商品を製造しているとも主張するが、被告会社は、これを否認し、被告商品はイタリアのサパフ社が製造し、右のとおり被告國田が輸入し、被告会社が被告國田から仕入れて販売しているものであると主張する。

二  原告の請求

原告は、

<1>  原告商品の各形態は、遅くとも被告会社及び被告國田(以下「被告ら」という)が被告商品の輸入、販売を開始した平成七年には、原告の商品表示として需要者の間に広く認識されていたところ、イ号商品は原告商品(一)と、ロ号商品は原告商品(二)と、ハ号商品は原告商品(三)と、ニ号商品は原告商品(四)と、ホ号商品は原告商品(五)と、ヘ号商品は原告商品(六)とそれぞれ形態が同一又は類似のものであり、原告商品との誤認混同を生じさせているので、被告商品を被告会社が製造、販売し、被告國田が輸入、販売する行為は不正競争防止法二条一項一号の不正競争に当たる、

<2>  イ号商品は原告商品(一)、ハ号商品は原告商品(三)、ニ号商品は原告商品(四)、ホ号商品は原告商品(五)の各形態を酷似的に模倣したものであるから、右各商品を被告会社が販売し、被告國田が輸入、販売する行為は同法二条一項三号の不正競争に当たる

と主張して、同法三条一項に基づき、被告会社に対し被告商品の製造、販売、販売のための展示の差止めを(同法二条一項三号の不正競争の関係では、「製造」の差止請求は同法三条二項の請求として)、被告國田に対し被告商品の輸入、販売、販売のための展示の差止めを、同法三条二項に基づき被告らに対し被告商品の廃棄を求めるとともに、同法四条、同条・五条一項又は四条・五条二項に基づき被告らに対し損害賠償とこれに対する民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。

三  争点

1(一)  原告商品の各形態は、原告の商品表示として需要者の間に広く認識されているか。

(二)  被告商品は、その各形態により原告商品との誤認混同を生じさせるものであるか。

2  被告らがイ号商品、ハ号商品、ニ号商品及びホ号商品を輸入、販売する行為は、不正競争防止法二条一項三号の不正競争に当たるか。

3  被告らが原告に対して損害賠償責任を負う場合に賠償すべき損害の額。

第三  争点に関する当事者の主張

一  争点1(一)(原告商品の各形態は、原告の商品表示として需要者の間に広く認識されているか)について

【原告の主張】

原告商品の各形態は、遅くとも平成七年には原告の商品表示として需要者の間に広く知られていた。

1 原告商品の各形態は、次の(一)ないし(六)のとおりである。

(一) 原告商品(一)

(1) 略扇形状の二枚の皮革、略矩形状の二枚の皮革、楕円形の一枚の皮革、二本の肩掛け紐からなる。正面、背面、底面及び肩掛け紐を構成する皮革には、シボ状の型押し模様(これを用いた商品は、原告のエピ・ラインの商品として広く知られている)が付されている。

(2) 正面及び背面より見ると、底面が小さく上方に向かって略扇形状をなしており、その上方はゆるやかな円弧状をなしている。

(3) 各側面より見ると、一枚の略矩形状の皮革が、底面方向にタックをとり、(2)の正面及び背面の二枚の皮革及び楕円の底面皮革に縫合されているため、上方に広い略V字形の襠部を構成している。

(4) 底面は、楕円状をなしている。

(5) 略扇形状の正面及び背面の上方部分に、各先端が矢じり状の肩掛け紐が各一本装着されており、各肩掛け紐の周縁部にはステッチが一本かかっている。

(6) 大きさは、横幅四五cm、高さ三〇cm、奥行き一七cmである。

(二) 原告商品(二)

(1) 長方形の二枚の皮革、細長い長方形の二枚の皮革、楕円形の一枚の皮革、一本の幅広の肩掛け紐、開口部を縛る革紐、右紐通しの皮革板一枚からなる。正面、背面、底面及び肩掛け紐を構成する皮革には、シボ状の型押し模様が付されている。

(2) 正面及び背面より見ると、上部の開口部の下方に各六か所に鳩目穴があり、これに紐が挿通され、紐には一枚の紐通し板が設けられている。開閉は、紐通し板の摺動により、紐を締めたり緩めたりすることにより行われ、閉めたときには、上部は三つ折れの襞状となり、各左右四か所の鳩目穴はこの襞中に入り、中央部の二か所の鳩目穴のみが残る。

(3) 各側面より見ると、正面と背面の各長方形の二枚の皮革の縫い目を隠す細長い長方形の一枚の皮革が縫合されている。

(4) 底面は、楕円状をなしている。

(5) 肩掛け紐は、正面上端に幅広に縫合され、肩山まで先細り状となり、肩山を境としてベルト状となって下方にはベルト穴が穿たれ、そして、背面下端部中央に縫合されたベルト金具と契合している。

(6) 大きさは、横幅三〇cm、高さ三六cm、奥行き一五cmである。

(三) 原告商品(三)

(1) 長方形の二枚の皮革、細長い長方形の二枚の皮革、楕円形の一枚の皮革、一本の帯状の皮革、一本の肩掛け紐からなる。正面、背面、底面及び肩掛け紐を構成する皮革には、シボ状の型押し模様が付されている。

(2) 正面及び背面より見ると、上部の開口部の下方を一周する帯状の皮革があり、これは正面で開閉自在に打ち合わせられている。帯状の皮革を打ち合わせて開口部を閉めたときには、上部が三つ折れの襞状となって縦長の略台形となる。

(3) 側面より見ると、正面と背面の各長方形の二枚の皮革の縫い目を隠す細長い長方形の一枚の皮革が縫合されている。

(4) 底面は、楕円状をなしている。

(5) 肩掛け紐は、側面に底辺から略中央部に縫合されている。

(6) 大きさは、横幅二七cm、高さ三〇cm、奥行き一四cmである。

(四) 原告商品(四)

(1) 長方形の三枚の皮革、細長い長方形の二枚の皮革、一本の幅広の肩掛け紐、開口部を縛る革紐、右紐通しの皮革板一枚からなる。正面、背面、底面及び肩掛け紐を構成する皮革には、シボ状の型押し模様が付されている。

(2) 正面及び背面より見ると、上部の開口部の下方に各六か所に鳩目穴があり、これに紐が挿通されている。開閉は、紐を結んだり解いたりすることにより行われ、閉めたときには、上部は三つ折れの襞状となり、各左右四か所の鳩目穴はこの襞中に入り、中央部の二か所の鳩目穴のみが残る。

(3) 各側面より見ると、正面と背面の各長方形の二枚の皮革の縫い目を隠す細長い長方形の一枚の皮革が縫合されており、その上端部にD型金具があり、これに肩掛け紐が挿通されている。

(4) 底面は、角を落とした略長方形をなしている。

(5) 肩掛け紐は、両側面上端のD型金具に挿通され、二か所にベルト金具、ベルト穴、各二個のベルト通しがあり、これにより長さの調節が自在となっている。

(6) 大きさは、横幅二四cm、高さ二七cm、奥行き一八cmである。

(五) 原告商品(五)

(1) 長方形の二枚の皮革、細長い長方形の六本の皮革、一本の肩掛け兼用、の開口部を縛る革紐とベルト金具、D型金具一個、ベルト通し一個、口辺部引締め用輪状の皮革一個、二枚の長方形の皮革からなる。正面、背面及び底面を構成する皮革には、シボ状の型押し模様が付されている。

(2) 正面及び背面より見ると、各三本の細長い長方形の皮革が胴部に縫合され、開口部においてこれが各三個の輪を形成し、その輪に一本の肩掛け兼用の開口部を縛る革紐が挿通され、胴部の背面下辺中央部に設けられたD型金具を経てベルト金具、ベルト通しを介して連結されて輪状のベルト部を形成している。

(3) 側面は、胴部とその下端に、長方形の皮革が底辺と同周に縫合されている。

(4) 底面は、小判型をなしている。

(六) 原告商品(六)

(1) 正面と背面の長方形の各一枚の皮革、帯状の皮革一枚、上部はアーチ型で下部は角形状の二枚の皮革、二本の持ち手、D型金具と略五角形の皮革各四個、片側面のポケット用皮革、ファスナー一本からなる。正面、背面及び側面を構成する皮革には、シボ状の型押し模様が付されている。

(2) 正面及び背面より見ると、長方形で、側面はアーチ型であり、全体的形状はいわゆる蒲鉾型状である。正面及び背面の上部に、持ち手がD型金具を介して略五角形の皮革と一体となり、縫合されている。

(3) 一側面には、四角形のポケットが縫合されている。

(4) 底面は長方形をなしており、中央部を横断して帯状の皮革一枚が縫着されている。

(5) 上端全長にファスナー一本が縫着されている。

(6) 大きさは、横幅三五cm、高さ二三cm、奥行き一八cmである。

2 原告商品は、右1記載のようにその形態が顕著であり、原告は、前記第二の一1のとおり、ライセンス契約による日本等での製造はしておらず、フランス国内において製造した原告商品を、原告の日本における子会社の直営店六店及び特約店二八店においてのみ日本国内で販売し、品質の保持管理、商品及び商品表示の信用維持に努めている。

原告商品は、いずれもその販売開始(原告商品(一)及び(四)は平成五年四月、原告商品(二)及び(六)は平成五年四月以前、原告商品(三)は平成六年一一月、原告商品(五)は平成七年四月)以来女性を中心とした購買層に爆発的な人気を博し、売上げが急上昇した商品であって、その売上げは原告が日本国内で販売している鞄類・袋物類八〇〇種類の中で常に上位にランクされている。このことは、原告商品が販売開始後間もないものであることからして、その人気の高さを如実に示しているということができる。そして、原告は、自ら原告商品の広告宣伝に努めているのはもとより、女性向け雑誌に記事として多数掲載された実績もある。

以上により、原告商品の各形態は、遅くとも被告らが被告商品の輸入、販売を開始した平成七年には、原告が製造、販売する商品であることを示す商品表示として需要者の間に広く認識されていたというべきである。

3 被告らは、商品の形態自体が特定人の商品表示であると認められるためには、商品目的からくる制約の範囲内で需要者の嗜好を考慮したり、新規な優れた意匠的効果を考えるなどして商品の形態を選択した結果、その商品が独自的な特徴を帯びることが必要であると主張するが、被告ら独自の見解である。

特定の商品の形態が一定期間使用されたことで特定の出所を表す二次的出所表示機能を取得すれば不正競争防止法二条一項一号(旧不正競争防止法一条一項一号)にいう商品表示として保護されることが多くの裁判例によって認められている(電線の保護カバーの形態に関するものとして、大阪地方裁判所昭和五九年四月二六日判決・判例タイムズ五三六号四一〇頁、大阪地方裁判所昭和六〇年三月二〇日判決・無体裁集一七巻一号七八頁、その控訴審である大阪高等裁判所昭和六〇年一〇月二四日判決・無体裁集一七巻三号五一七号、東京地方裁判所平成元年一二月二八日判決・無体裁集二一巻三号一〇七三頁。伝票会計用伝票の形態に関するものとして、東京地方裁判所昭和六一年一月二四日判決・判例時報一一七九号一一一頁。写真植字機用文字盤の形態に関するものとして、東京地方裁判所昭和六三年一月二二日判決・無体裁集二〇巻一号一頁、その控訴審である東京高等裁判所平成元年一月二四日判決・無体裁集二一巻一号一頁)。

確かに、単なる地模様には商品表示性はないが、それは「単なる」地模様だからであって、右裁判例からも明らかなように、模様はもちろんのこと、色落ち三色の配色(大阪地方裁判所昭和五八年一二月二三日判決・無体裁集一五巻三号八九四頁、その控訴審である大阪高等裁判所昭和六〇年五月二八日判決・無体裁集一七巻二号二七〇頁)や、「4T-3」等の数字とアルファベットからなる規格表示(大阪地方裁判所昭和五六年三月二七日判決・無体裁集一三巻一号三三六頁)までも、商品表示性が認められている。ましてや、原告商品のエピ生地の地模様は、エピ・ラインの名称と相俟って明らかに商品表示性を有している。

以上のように、右のいずれの裁判例においても、被告ら主張のように新規な優れた意匠的効果を考えて選択された商品形態であることが二次的出所表示機能を認めるための要件とはされていない。被告らは、ありふれた商品形態や技術的機能から形成される商品の形態について商品表示性を否定した裁判例の趣旨を曲解して主張するものである。

【被告らの主張】

1 原告商品の各形態が原告主張のとおりであることは認めるが、シボ状の型押し模様を用いた商品は原告のエピ・ラインの商品として広く知られているとの事実は争う。被告らが被告商品を輸入、販売した時点において原告が原告商品を製造、販売していたことは不知。

2 原告商品の各形態が原告が製造、販売する商品であることを示す商品表示として需要者の間に広く認識されているとの主張は争う。

商品の形態は、流通過程においてその商品の出所を表示する機能を本来的には有していないのであるから、不正競争防止法二条一項一号にいう「他人の商品等表示」に該当するためには、取引上その形態によって直ちに商品の見分けがつき、その出所が分かる程度になっていることが必要である。すなわち、商品の形態自体が特定人の商品表示であると認められるためには、商品目的からくる制約の範囲内で需要者の嗜好を考慮したり、新規な優れた意匠的効果を考えるなどして商品の形態を選択した結果、その商品が独自的な特徴を帯びることが必要である。ところが、原告商品の各形態は、いずれも鞄としてごくありふれたものであり、独自性を有しないから、「他人の商品等表示」には該当しない。仮に原告商品の各形態が出所表示機能を有するとしても、原告主張の販売開始時期からして、周知性を取得しているとはいえない。

また、原告は、原告商品の正面、背面、底面及び肩掛け紐を構成する皮革にシボ状の型押し模様が付されていること、これを用いた商品を「エピライン」と称していることをもって、商品表示性がある旨主張するが、このようなシボ(皺)状型押し模様に商品表示性はない。商品の模様には本来商品表示性はなく、他メーカーも同様のシボ状型押し模様の皮革を用いた商品を販売していることから明らかなように、シボ状型押し模様は「単なる」地模様に外ならないからである。このことは、原告がシボ状型押し模様が付された商品を「エピライン」と称して広告宣伝していても変わらない。「エピ」とはフランス語で「穂」という普通名詞であり、「エピライン」との名称が原告商品の各形態の商品表示性を補完するとはいえないからである。

二  争点1(二)(被告商品は、その各形態により原告商品との誤認混同を生じさせるものであるか)について

【原告の主張】

1 被告商品は、次の(一)ないし(六)のとおりの形態であるところ、イ号商品は原告商品(一)、ロ号商品は原告商品(二)、ハ号商品は原告商品(三)、ニ号商品は原告商品(四)、ホ号商品は原告商品(五)、ヘ号商品は原告商品(六)とそれぞれ形態が同一又は類似のものであり、同じ女性を顧客層としているから、被告商品は、その各形態により原告商品との誤認混同を生じさせるものである。加えて、被告らは、原告商品(一)、(二)、(三)、(四)、(五)、(六)に対してイ号商品、ロ号商品、ハ号商品、ニ号商品、ホ号商品、ヘ号商品というように逐次連続的に原告のヒット商品を模倣して製造、販売しており、商品名も原告商品の名称にタイプを付したものであり(但し、原告商品(二)「サック・ア・ド」に対しては、ロ号商品は「サック・ドア タイプ」)、サイズも原告商品と同じで(但し、ホ号商品は、原告商品(五)より若干高さが高い)、生地(シボ状の型押し模様の付された鮮やかな発色の皮革)も原告商品を模した生地を使用しているから、誤認混同のおそれはより一層増大している。

(一) イ号商品

(1) 略扇形状の二枚の皮革、略矩形状の二枚の皮革、楕円形の一枚の皮革、二本の肩掛け紐からなる。正面、背面、底面及び紐を構成する皮革には、シボ状の型押し模様が付されている。

(2) 正面及び背面より見ると、底面が小さく上方に向かって略扇形状をなしており、その上方はゆるやかな円弧状をなしている。

(3) 各側面より見ると、一枚の略矩形状の皮革が、底面方向にタックをとり、(2)の正面及び背面の二枚の皮革及び楕円の底面皮革に縫合されているため、上方に広い略V字形の襠部を構成している。

(4) 底面は、楕円状をなしている。

(5) 略扇形状の正面及び背面の上方部分に、各先端が矢じり状の肩掛け紐が各一本装着されており、各肩掛け紐の周縁部にはステッチが一本かかっている。

(6) 大きさは、横幅四五cm、高さ三〇cm、奥行き一七cmである。

(二) ロ号商品

(1) 長方形の二枚の皮革、細長い長方形の二枚の皮革、楕円形の一枚の皮革、一本の幅広の肩掛け紐、開口部を縛る革紐、右紐通しの皮革板一枚からなる。正面、背面、底面及び肩掛け紐を構成する皮革には、シボ状の型押し模様が付されている。

(2) 正面及び背面より見ると、上部の開口部の下方に各六か所に鳩目穴があり、これに紐が挿通され、紐には一枚の紐通し板が設けられている。開閉は、紐通し板の摺動により、紐を締めたり緩めたりすることにより行われ、閉めたときには、上部は三つ折れの襞状となり、各左右四か所の鳩目穴はこの襞中に入り、中央部の二か所の鳩目穴のみが残る。

(3) 各側面より見ると、正面と背面の各長方形の二枚の皮革の縫い目を隠す細長い長方形の一枚の皮革が縫合されている。

(4) 底面は、楕円状をなしている。

(5) 肩掛け紐は、正面上端に幅広に縫合され、肩山まで先細り状となり、肩山を境としてベルト状となって下方にはベルト穴が穿たれ、そして、背面下端部中央に縫合されたベルト金具と契合している。

(6) 大きさは、横幅三〇cm、高さ三六cm、奥行き一五cmである。

(三) ハ号商品

(1) 長方形の二枚の皮革、細長い長方形の二枚の皮革、楕円形の一枚の皮革、一本の帯状の皮革、一本の肩掛け紐からなる。正面、背面、底面及び肩掛け紐を構成する皮革には、シボ状の型押し模様が付されている。

(2) 正面及び背面より見ると、上部の開口部の下方を一周する帯状の皮革があり、これは正面で開閉自在に打ち合わせられている。帯状の皮革を打ち合わせて開口部を閉めたときには、上部が三つ折れの襞状となって縦長の略台形となる。

(3) 側面より見ると、正面と背面の各長方形の二枚の皮革の縫い目を隠す細長い長方形の一枚の皮革が縫合されている。

(4) 底面は、楕円状をなしている。

(5) 肩掛け紐は、側面に底辺から略中央部に縫合されている。

(6) 大きさは、横幅二七cm、高さ三〇cm、奥行き一四cmである。

(四) ニ号商品

(1) 長方形の三枚の皮革、細長い長方形の二枚の皮革、一本の幅広の肩掛け紐、開口部を縛る革紐、右紐通しの皮革板一枚からなる。正面、背面、底面及び肩掛け紐を構成する皮革には、シボ状の型押し模様が付されている。

(2) 正面及び背面より見ると、上部の開口部の下方に各六か所に鳩目穴があり、これに紐が挿通され、紐には一枚の紐通し板が設けられている。開閉は、紐通し板の摺動により、紐を締めたり緩めたりすることにより行われ、閉めたときには、上部は三つ折れの襞状となり、各左右四か所の鳩目穴はこの襞中に入り、中央部の二か所の鳩目穴のみが残る。

(3) 各側面より見ると、正面と背面の各長方形の二枚の皮革の縫い目を隠す細長い長方形の一枚の皮革が縫合されており、その上端部にD型金具があり、これに肩掛け紐が挿通されている。

(4) 底面は、角を落とした略長方形をなしている。

(5) 肩掛け紐は、両側面上端のD型金具に挿通され、二か所にベルト金具、ベルト穴、各二個のベルト通しがあり、これにより長さの調節が自在となっている。

(6) 大きさは、横幅二四cm、高さ二七cm、奥行き一八cmである。

(五) ホ号商品

(1) 長方形の二枚の皮革、細長い長方形の六本の皮革、一本の肩掛け兼用の開口部を縛る革紐とベルト金具、D型金具一個、ベルト通し一個、口辺部引締め用輪状の皮革一個、二枚の長方形の皮革からなる。正面、背面、底面及び肩掛け紐を構成する皮革には、シボ状の型押し模様が付されている。

(2) 正面及び背面より見ると、各三本の細長い長方形の皮革が胴部に縫合され、開口部においてこれが各三個の輪を形成し、その輪に一本の肩掛け兼用の開口部を縛る革紐が挿通され、胴部の背面下辺中央部に設けられたD型金具を経てベルト金具、ベルト通しを介して連結されて輪状のベルト部を形成している。

(3) 側面は、胴部とその下端に、長方形の皮革が底辺と同周に縫合されている。

(4) 底面は、小判型をなしている。

(六) ヘ号商品

(1) 正面と背面の長方形の各一枚の皮革、帯状の皮革一枚、上部はアーチ型で下部は角形状の二枚の皮革、二本の持ち手、D型金具と略五角形の皮革各四個、片側面のポケット用皮革、ファスナー一本からなる。正面、背面及び側面を構成する皮革には、シボ状の型押し模様が付されている。

(2) 正面及び背面より見ると、長方形で、側面はアーチ型であり、全体的形状はいわゆる蒲鉾型状であり、持ち手がD型金具を介して略五角形の皮革と一体となり、上部に縫合されている。

(3) 一側面には、四角形のポケットが縫合されている。

(4) 底面は長方形をなしており、中央部を横断して帯状の皮革一枚が縫着されている。

(5) 上端全長にファスナー一本が縫着されている。

(6) 大きさは、横幅三五cm、高さ二三cm、奥行き一八cmである。

2 被告らは、被告商品と原告商品との誤認混同が生じないとする理由の一つとして、被告商品を通信販売する際「コルムナ・エピラインタウン用バッグ〇〇タイプ」という表題を付している旨主張する。

しかしながら、原告は、その製造、販売する商品について「モノグラム ライン」「エピ ライン」「タイガ ライン」という三つのライン区分をしており、「エピライン」とは、原告のエピ生地使用の鞄類を指すのであるから、「エピライン」という語を付記すること(被告会社は、被告商品を「エピライン」と総称し、また、広告等に「大人気のエピライン」と記載している)は、誤認混同を防止する打消し表示として作用するどころか、むしろ、原告商品との誤認混同を増幅せしめるものである。

また、原告の周知の商品表示である原告商品の形態に類似する形態の被告商品を販売する場合に、たとえこれに「コルムナ」又は「LC」のような商標等の文字表示を付記しても、需要者はなお出所が同一の商品であると誤認混同するおそれがある。この点について、被告使用標章が原告の周知商標「チョコクリスピー」と全体として類似しており、被告使用標章に被告の商品を表示する商標として著名な「シスコーン」又は「CISCORN」の商標が併記されていても、被告使用標章を付した食品を販売すると、需要者は右周知商標と同一の出所の商品であると誤認混同するおそれがあると判断した裁判例がある(大阪地方裁判所平成三年四月二六日判決・知的裁集二三巻一号二六四頁。その控訴審である大阪高等裁判所平成四年九月三〇日判決・知的裁集二四巻三号七五七頁)。これに対し、本件被告商品に付記されている「コルムナ」又は「LC」という表示は、著名どころか周知でもないのであるから、これによって誤認混同のおそれの消長に何ら影響を及ぼすものではない。このように、商標等の文字表示が誤認混同のおそれを左右するものではないと判断した裁判例は多い(前記一【原告の主張】3掲記のもの〔但し、大阪地方裁判所昭和五六年五月二八日判決を除く〕の外、東京地方裁判所平成六年四月八日判決・日本知的財産協会判例集平成七年二三六頁)。

【被告らの主張】

1 被告商品の各形態についての前記【原告の主張】1の(一)ないし(六)の主張は、その大きさが次のとおり異なる点を除き、認めるが、被告商品は、原告商品とそれぞれ形態が同一又は類似のものであり、その各形態により原告商品との誤認混同を生じさせるものであるとの主張は争う。

イ号商品 横幅四五・五cm、高さ三〇・五cm、奥行き一七・五cm

ロ号商品 横幅三〇・五cm、奥行き一六cm

ハ号商品 横幅二八・五cm、高さ三一・四cm、奥行き一四・四cm

ニ号商品 横幅二五cm、奥行き一七・五cm

ヘ号商品 横幅三七cm、高さ二四cm、奥行き一九・五cm

2 そもそも、不正競争防止法において保護されるべきは「他人」の商品表示であるから、誤認混同のおそれは「他人」すなわち原告の商品であることについて認められなければならない。この点、まず、被告らは、平成七年一一月九日から平成八年一月二〇日まで日刊紙に通算一五回の通信販売の広告を掲載して被告商品を販売したところ(乙一ないし一五)、その際、「ルイ・ヴィトン」という表示は一切使用せず、「コルムナ・エピラインタウン用バッグ〇〇タイプ」という表題のもとにイタリアのサパフ社が製造したものであることを記載しており、販売価格も、原告商品の販売価格(九万〇六四〇円ないし一三万二〇〇〇円)に対し、希望小売価格七万二〇〇〇円であるところ二万九八〇〇円であること、コピー商品が市場に氾濫している現況下においては、需要者は「ルイ・ヴィトン」の商品であるか否か購入時に細部にわたり検討するのが常識であり、そうであれば、被告商品と原告商品との差異は一目瞭然であることからして、需要者が被告商品をもって原告の商品であると誤認混同するおそれはいかなる意味においてもありえない。

原告は、誤認混同のおそれについて、チョコクリスピー事件判決を引用して主張するが、右判決は、周知商標である「チョコクリスピー」を不正に使用したことに関する事案であり、本件では商標に比較して著しく商品表示性の弱い商品の形態の使用が争点になっているのであるから、右判決は本件には当てはまらない。

三  争点2(被告らがイ号商品、ハ号商品、ニ号商品及びホ号商品を輸入、販売する行為は、不正競争防止法二条一項三号の不正競争に当たるか)について

【原告の主張】

1 原告は、原告商品(一)を平成五年四月から、原告商品(三)を平成六年一一月から、原告商品(四)を平成五年四月から、原告商品(五)を平成七年四月からそれぞれ販売している。一方、被告らは、イ号商品、ハ号商品、ニ号商品、ホ号商品をいずれも平成七年一〇月頃から販売している。

そして、イ号商品は原告商品(一)、ハ号商品は原告商品(三)、ニ号商品は原告商品(四)、ホ号商品は原告商品(五)と形態が同一であり、原告商品(一)、(三)、(四)、(五)はいずれも多数の顧客がウエイティングリストに登録して購入の順番待ちをしているほどの人気商品であって、その商品形態はよく知られていたから、被告らが原告商品(一)、(三)、(四)、(五)に依拠してこれを模倣したことは明らかである。

2 被告会社の主張はすべて争う。

【被告らの主張】

原告商品(一)、(三)、(四)、(五)の商品形態がよく知られていたこと、被告らが原告商品(一)、(三)、(四)、(五)に依拠してこれを模倣したことは争う。

【被告会社の主張】

1 原告商品(一)、(三)、(四)、(五)の各形態は、いずれも「鞄」として通常有する形態そのものであり、不正競争防止法二条一項三号の「商品の形態」には当たらない(なお、原告商品(一)、(四)は、その販売開始時から既に三年が経過している)。

2 仮に、右1の主張が認められないとしても、被告会社は、イ号商品、ハ号商品、ニ号商品、ホ号商品を譲り受けて譲渡したにすぎず、譲受けの当時、これらの商品が、原告商品(一)、(三)、(四)、(五)の各形態を模倣したものであることを知らず、かつ知らないことにつき重大な過失がなかったから、不正競争防止法一一条一項五号により、同法三条、四条の適用はない。

四  争点3(被告らが原告に対して損害賠償責任を負う場合に賠償すべき損害の額)について

【原告の主張】

1 被告会社の賠償すべき損害の額

(一) 被告会社は、平成七年一〇月から平成八年一月までの間に、被告國田から被告商品を少なくとも五二個仕入れて販売した。これによって被った損害について、原告は、次の(1)ないし(3)のいずれかを主張する。

(1) 不正競争防止法四条自体に基づく主張

原告は、被告会社の行為によって被告商品に対応する原告商品五二個を販売する機会を失ったから、原告が原告商品を販売すれば得られたであろう販売利益が原告の損害となる。

原告商品の各販売価格は、原告商品(一)が九万六〇〇〇円、原告商品(二)が一三万二〇〇〇円、原告商品(三)が九万六〇〇〇円、原告商品(四)が九万八八八〇円、原告商品(五)が一〇万七一二〇円、原告商品(六)が九万〇六四〇円であり、その平均価格は一〇万三四四〇円であって、少なくとも一〇万円を下らない。そして、原告の利益率は二三%である。

したがって、原告は、被告会社の行為がなければ、一一九万六〇〇〇円(一〇万円×二三%×五二個)の利益を得られたはずであり、同額の損害を被った。

(2) 不正競争防止法四条、五条一項に基づく主張

被告会社は、被告商品を被告國田から一個一万七〇〇〇円で仕入れ、これを消費者に二万九八〇〇円で販売したから、被告会社は六六万五六〇〇円〔(二万九八〇〇円-一万七〇〇〇円)×五二個〕の利益を得た。

右利益の額は、不正競争防止法五条一項により、原告の被った損害の額と推定される。

(3) 不正競争防止法四条、五条二項に基づく主張

原告商品の各形態は極めて著名であり、強い顧客吸引力を有するので、原告が原告商品の各形態と同一の形態の商品の販売を許諾するについて通常受けるべき金銭の額は、原告商品の各販売価格の一〇%を下らないから、被告商品一個について、対応する原告商品の各販売価格の平均価格(前記(一)の一〇万円)の一〇%である一万円である。

したがって、原告は、不正競争防止法五条二項に基づき、五二万円(一万円×五二個)を自己が受けた損害の額として請求する。

(二) 被告会社に対する第一事件についての弁護士費用は一〇万円が相当である。

(三) よって、原告は、被告会社に対し、第一次的に(一)(1)と(二)の合計一二九万六〇〇〇円、第二次的に(一)(2)と(二)の合計七六万五六〇〇円、第三次的に(一)(3)と(二)の合計六二万円の賠償を請求する。

2 被告國田の賠償すべき損害の額

(一) 被告國田は、平成七年九月から一一月頃までの間、イタリアのサパフ社から被告商品を一個当たり一万二五〇六円を上回らない価格(輸入価格は、イ号商品一万二二〇〇円、ロ号商品一万二九八六円以下、ハ号商品一万〇九二〇円、ニ号商品一万一三七二円以下、ホ号商品一万三三二五円、ヘ号商品一万四二三二円以下を平均したもの)で、九五〇個(そのうち五一〇個は株式会社アーミン名義で)輸入し、平成七年一〇月初めから平成八年九月末までの間に、被告商品を被告会社に対して五五個、株式会社アーミンに対して一五〇個、それ以外の者に対して残り七四五個販売した。これによって原告が被った損害は、次の(1)ないし(3)のとおりである。

(1) 被告会社に販売した分

被告國田は、被告会社に対して、被告商品五五個を一個一万七〇〇〇円で販売したから、二七万一九二〇円〔(一万七〇〇〇円-一万二五〇六円)×五五個〕の利益を得た。

右利益の額は、不正競争防止法五条一項により、原告が受けた損害の額と推定される。

(2) 株式会社アーミンに販売した分

被告國田は、株式会社アーミンに対して、被告商品一五〇個を合計二四八万五七五〇円で販売したから、六〇万九八五〇円〔二四八万五七五〇円-(一万二五〇六円×一五〇個)〕の利益を得た。

右利益の額は、不正競争防止法五条一項により、原告が受けた損害の額と推定される。

(3) 被告会社及び株式会社アーミン以外の者に販売した分

被告國田が被告会社及び株式会社アーミン以外の者に対して被告商品七四五個を販売したことにより原告の被った損害について、原告は、次の<1>及び<2>のいずれかを主張する。

被告國田は、被告商品七四五個を一個五〇〇〇円で販売したため損害を被っているので、不正競争防止法五条一項により原告の受けた損害の額と推定される利益は存しない旨主張するが、そもそも被告國田がこのような安価で被告商品を販売したという証拠はないし、商人である被告國田がこのように仕入価格を大幅に下回る価格で商品を販売することは極めて不自然であって、にわかに信じがたい。仮に、被告國田が右のような安価で被告商品を販売したとすれば、それは、原告から被告会社に対して不正競争に該当する旨の警告がなされ、訴訟(第一事件)の提起がなされたことを知り、いずれ被告商品が販売できなくなることを見越して、その損害回避のために被告商品を不当廉売したものと考えられるから、このような事情のもとでは、被告國田が利益を得ていないからといって原告の損害はないとすることは相当でない。

<1> 不正競争防止法四条自体に基づく主張

原告は、被告國田の行為によって被告商品に対応する原告商品を販売する機会を失ったから、原告が原告商品を販売すれば得られたであろう販売利益が原告の損害となる。原告商品の各販売価格及び原告の利益率は、前記1(一)(1)記載のとおりである。

したがって、原告は、被告國田の行為がなければ、一六四四万九六〇〇円(九万六〇〇〇円×二三%×七四五個)の利益を得られたはずであり、同額の損害を被った。

<2> 不正競争防止法四条、五条二項に基づく主張

前記1(一)(3)記載のとおり、原告商品の各形態と同一の形態の商品の販売を許諾するについて通常受けるべき金銭の額は、原告商品の各販売価格の一〇%を下らない。被告國田は、被告商品を各五〇〇〇円で販売したと主張するが、これは前記のとおり不当廉売であるから、原告商品の販売価格(九万六〇〇〇円)を基準とすべきである。

したがって、原告は、不正競争防止法五条二項に基づき、七一五万二〇〇〇円(九万六〇〇〇円×一〇%×七四五個)を自己が受けた損害の額として請求する。

(二) 原告は、国際的に著名な鞄の製造販売業者であり、その名声と信用を保護するため厳格な品質管理に努めており、原告の製造、販売する各商品は、そのデザインの斬新性や品質の良さ等により国際的に極めて高く評価され、日本国内においても広く愛好され極めて人気の高い商品である。

特に、本件のエピラインに属する原告商品は、原告の製造、販売する商品のうちでも最近極めて人気があり、日本国内における原告の売上高の約四〇%を占めるに至っている。被告國田は、右のような人気シリーズ商品のイメージに便乗する目的で、その酷似的模倣商品である被告商品にそれぞれ原告商品の商品名と同一又は極めて類似した名称を付し、「大人気のエピライン」「エピライン タウン用バッグ」と題して、一流日刊紙に多色刷り印刷の写真入りで半頁以上の大きさの広告を頻繁に掲載し、通信販売を行ってきたのである。

このような被告國田の広告宣伝販売により、原告は、原告商品の良好な商品イメージを汚染され、その表示及び形態が有する顧客吸引力を減殺されるなどの無形損害(信用損害)を被ったところ、これを金銭に評価すると三〇〇万円を下らない。

(三) 被告國田に対する第二事件についての弁護士費用は五〇〇万円を下らないが、そのうちの五〇万円を請求する。

(四) よって、原告は、被告國田に対して、第一次的には(一)(1)、(2)、(3)<1>、(二)、(三)の合計二〇八三万一三七〇円、第二次的に(一)(1)、(2)、(3)<2>、(二)、(三)の合計一一五三万三七七〇円の賠償を請求する。

【被告会社の主張】

1 【原告の主張】1(一)については、被告会社が被告國田から被告商品を五二個仕入れて販売したことは認めるが、その(1)ないし(3)の主張は争う。

(一) 不正競争防止法四条自体に基づく主張について

被告会社が被告商品を販売した個数分(五二個)だけ原告商品を販売する機会を失ったということはありえない。

(二) 不正競争防止法四条、五条一項に基づく主張について

被告会社は、被告商品の通信販売のため、延べ一五回にわたり読売新聞、産経新聞、毎日新聞等の一流日刊紙上に相当大きなカラー広告を掲載しており、広告費用だけでも大幅な欠損が生じているから、不正競争防止法五条一項により原告の受けた損害の額と推定される利益は存しない。

(三) 不正競争防止法四条、五条二項に基づく主張について

不正競争防止法五条二項所定の許諾料算定の基準は、被告商品の販売価格に求めるべきである。また、許諾料は、その許諾の内容により当然差異を生じる性質のものであって、商号、商標等のように原告が製造、販売する商品であることを端的に表示する商品表示の場合と比べて、商品形態のように極めて表示性の弱い商品表示の場合は、当然許諾料も低額であるべきである。

2 同1(二)の主張は争う。

【被告國田の主張】

1 【原告の主張】2(一)については、冒頭記載の事実は認めるが、その(1)ないし(3)の主張は争う。

被告國田は、被告商品を九五〇個輸入し、被告会社に五五個販売して二五万三八一二円の利益を、株式会社アーミンに一五〇個販売して六二万二五五〇円の利益を得た。しかしながら、残り七四五個については単価五〇〇〇円で販売したから、輸入単価の平均一万二五〇六円を基準として五五九万一九七〇円〔(一万二五〇六円-五〇〇〇円)×七四五個〕の損失を出している。したがって、被告國田は、被告商品の輸入販売により、差引き四七一万五六〇八円の損害を受けているので、不正競争防止法五条一項により原告の受けた損害の額と推定される利益は存しない。

前記【被告会社の主張】1(三)のとおり、不正競争防止法五条二項所定の許諾料算定の基準は、被告商品の販売価格に求めるべきである。また、許諾料は、その許諾の内容により当然差異を生じる性質のものであって、商号、商標等のように原告が製造、販売する商品であることを端的に表示する商品表示の場合と比べて、商品形態のように極めて表示性の弱い商品表示の場合は、当然許諾料も低額であるべきである。

2 同2(二)及び(三)の主張は争う。

第四  争点に対する当裁判所の判断

一  争点1(一)(原告商品の各形態は、原告の商品表示として需要者の間に広く認識されているか)について

原告は、原告商品の各形態は、遅くとも被告らが被告商品の輸入販売を開始した平成七年には、原告が製造、販売する商品であることを示す商品表示として需要者の間に広く認識されていたというべきであると主張する。

商品の形態は、本来、商品の機能をよりよく発揮させ、商品の外観上の美感を高める等の目的で選択されるものであって、本来的に商品の出所を表示するために選択されるものではないが、ある業者の商品の形態が他の業者の商品と識別できるだけの特徴を有する場合に、その商品が相当期間にわたって独占的に大量に販売されるとか、短期間でも強力に広告宣伝がなされることなどにより、商品の形態が当該業者の商品であることを示す出所表示機能を取得し、需要者の間において広く認識されるに至ることがあるので、かかる見地から原告商品の各形態について、以下検討する。

1  別紙原告商品目録(一)ないし(六)、証拠(甲二七の1及び各項掲記のもの)及び弁論の全趣旨によれば、原告商品は、いずれも女性用の鞄類であり、その各形態は、次のとおりであると認められる。

(一) 原告商品(一)(検甲一、二)

(1) 正面及び背面を構成する略扇形状の皮革片二枚、側面を構成する略矩形状の皮革片二枚、底面を構成する楕円形の皮革片一枚、帯状の長い皮革片一枚、ファスナー及び二本の肩掛け紐からなり、正面、背面及び底面を構成する各皮革片には、シボ状の型押し模様が付されている。

(2) 正面及び背面は、側縁が底辺において小さく上方に向かってゆるやかな円弧状をなして広がり、上縁がゆるやかな円弧状をなしている略扇形状であり、下端部全周に帯状の長い皮革片が底辺と同周に縫合されている。

(3) 各側面は、略矩形状の皮革片が底面方向にタックをとって、正面、背面及び底面を構成する各皮革片にそれぞれ縫合され、上方に広い略V字形の襠部を形成している。

(4) 底面は楕円状をなし、上面は全長にわたってファスナーが縫着されている。

(5) 略扇形状の正面及び背面の上方部分に、各先端が矢じり状の肩掛け紐が各一本装着されている。

(6) 大きさは、横幅四五cm、高さ三〇cm、奥行き一七cmである。

(二) 原告商品(二)(検甲五、六)

(1) 正面及び背面を構成する長方形の皮革片二枚、側面に縫合される細長い長方形の皮革片二枚、底面を構成する楕円形の皮革片一枚、一本の幅広の肩掛け紐、ベルト金具、ベルト通し、上面の開口部を絞る革紐、右紐通しの皮革板一枚からなり、正面、背面及び底面を構成する各皮革片には、シボ状の型押し模様が付されている。

(2) 正面及び背面は、上面の開口部より約六分の一下方の位置にそれぞれ鳩目穴が横に六か所設けられており、これに革紐が挿通され、紐には一枚の紐通し板が背面において嵌められている。上面開口部の開閉は、紐通し板の摺動により、紐を締めたり緩めたりすることにより行われ、閉めたときには、上部は三つ折れの襞状となり、各左右四か所の鳩目穴はこの襞によって隠れ、中央部の二か所の鳩目穴のみが顕れる。

(3) 各側面は、正面及び背面を構成する長方形の皮革片二枚の縫い目を隠すように細長い長方形の皮革が縫合されている。

(4) 底面は、楕円状をなしている。

(5) 盾掛け紐は、正面上縁に幅広に縫合され、肩山まで先細り状となり、肩山を境としてベルト状となって先端部にベルト穴が穿たれ、背面下端部中央に縫合されたベルト金具と契合し、ベルト通しに挿通されている。

(6) 大きさは、横幅三〇cm、高さ三六cm、奥行き一五cmである。

(三) 原告商品(三)(検甲九、一〇)

(1) 正面及び背面を構成する長方形の皮革片二枚、側面に縫合される細長い長方形の皮革片一枚、底面を構成する楕円形の皮革片一枚、帯状の皮革片一枚及び一本の幅広の肩掛け紐、ベルト金具、ベルト通しからなり、正面、背面及び底面を構成する各皮革片には、シボ状の型押し模様が付されている。

(2) 正面及び背面は、上面の開口部より約四分の一下方の位置に本体を一周する帯状の皮革片が縫合され、正面で開閉自在に打ち合わせられている。帯状の皮革片を打ち合わせて開口部を閉めたときは、上部が三つ折れの襞状となって、全体は縦長の略台形となる。

(3) 側面の一方は、正面及び背面を構成する長方形の皮革片二枚の縫い目を隠すように細長い長方形の皮革片が底辺から上方に上縁を越えて縫合され、先端にベルト金具とベルト通しが取り付けられている。

(4) 底面は、楕円状をなしている。

(5) 肩掛け紐は、正面及び背面を構成する長方形の皮革片二枚の他方の側面における縫い目を隠すように底辺から縫合され、先端部にベルト穴が穿たれ、右(3)のベルト金具と契合し、ベルト通しに挿通されている。

(6) 大きさは、横幅二七cm、高さ三〇cm、奥行き一四cmである。

(四) 原告商品(四)(検甲一三、一四)

(1) 正面、背面及び底面を構成する長方形の皮革片三枚、側面に縫合される細長い長方形の皮革片二枚、一本の幅広の肩掛け紐、D型金具二個、ベルト金具二個、ベルト通し四個及び上面の開口部を縛る革紐からなり、正面、背面及び底面を構成する各皮革片には、シボ状の型押し模様が付されている。

(2) 正面及び背面は、上面の開口部よりやや下方の位置にそれぞれ鳩目穴が横に六か所設けられており、これに革紐が挿通されている。上面開口部の開閉は、正面において革紐を結んだり解いたりすることにより行われ、閉めたときには、上部は三つ折れの襞状となり、各左右四か所の鳩目穴はこの襞によって隠れ、中央部の二か所の鳩目穴のみが顕れる。

(3) 各側面は、正面及び背面を構成する長方形の皮革片二枚の縫い目を隠すように細長い長方形の皮革片が縫合されており、その上端部にD型金具が取り付けられている。

(4) 底面は、角を落とした略長方形をなしている。

(5) 肩掛け紐は、ベルト穴の穿たれた両端が右(3)の各側面上端部のD型金具に挿通されて折り返され、それぞれベルト金具と二個のベルト通しが設けられ、これにより長さの調節が自在となっている。

(6) 大きさは、横幅二四cm、高さ二七cm、奥行き一八cmである。

(五) 原告商品(五)(検甲一七、一九)

(1) 正面及び背面を構成する長方形の皮革片二枚、正面及び背面に縫合される細長い長方形の皮革片六枚、底面を構成する小判型の皮革片一枚、胴部下端全周に縫合されるやや細長い長方形の皮革片二枚、肩掛け兼用の上面開口部を絞る革紐一本、D型金具一個、ベルト金具一個、ベルト通し一個、開口部引締め用輪状の皮革片一個からなり、正面、背面及び底面を構成する各皮革片には、シボ状の型押し模様が付されている。

(2) 正面及び背面は、各三本の細長い長方形の皮革片が底辺から上方に上縁を越えて縫合され、開口部において折り返されてそれぞれ輪を形成し、その輪に肩掛け兼用の上面開口部を絞る革紐が挿通され、この革紐は、更に、背面下端部中央に設けられたD型金具に挿通されて折り返され、ベルト金具、ベルト通しを介して連結されて輪状のベルト部を形成している。上面開口部の開閉は、開口部引締め用輪状の皮革片の摺動により、革紐を締めたり緩めたりすることによって行われる。

(3) 胴部の下端全周に、やや細長い長方形の皮革片二枚が底辺と同周に縫合されている。

(4) 底面は、小判型をしている。

(5) 正面から見たときの横幅と高さの比は、一対一・三九である。

(六) 原告商品(六)(検甲二一、二二)

(1) 正面及び背面を構成する長方形の皮革片二枚、底面を構成する長方形の皮革片一枚、底面に縫合される帯状の皮革片一枚、側面を構成する上部はアーチ型で下部は角形状の皮革片二枚、側面に縫合される丸味を帯びた略三角形の皮革片二枚、側面の一方に縫合されるポケット用の略正方形の皮革片一枚、二本の持ち手、D型金具と略五角形の皮革片各四個、ファスナーからなる。正面、背面及び側面を構成する各皮革片には、シボ状の型押し模様が付されている。

(2) 正面及び背面は長方形で、側面は上部がアーチ型で下部が角形状であり、全体的形状はいわゆる蒲鉾型状の背を高くしたような形状である。正面及び背面の上部に、持ち手がD型金具を介して略五角形の皮革片と一体となって縫合されている。

(3) 各側面の上部アーチ型の頂点に丸味を帯びた略三角形の皮革片が縫合され、また、側面の一方には、略正方形の皮革片が縫合されてポケットを形成している。

(4) 底面は長方形をなしており、中央部を横断して帯状の皮革片一枚が縫合されている。

(5) 上面の全長にわたってファスナーが縫着されている。

(6) 大きさは、横幅三五cm、高さ二三cm、奥行き一八cmである。

2  証拠(各項掲記のもの)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(一) 原告は、一八五四年にパリで世界最初に開店した旅行鞄専門店を承継する会社であり、極めて堅牢なファッション性に富む高級な鞄類、袋物類を製造、販売するものとして世界的に著名である(弁論の全趣旨)。

原告は、一九五九年に「モノグラム・シリーズ(モノグラム・ライン)」を発売したのに続いて、一九八六年(昭和六一年)、麦の穂を図案化したものを型押ししたシボ状型押し模様の牛革(エピ生地)を使った各種の鞄を、「エピ・シリーズ(エピ・ライン)」として売り出した。原告商品は、いずれもこのエピ・シリーズに属するものであり(甲四の1、二一の1)、その発売時期は、原告商品(一)及び(四)が平成五年四月、原告商品(二)及び(六)が平成五年四月以前、原告商品(三)が平成六年一一月、原告商品(五)が平成七年四月である。

(二) 平成三年以降、いずれも女性を購読者層とする次の雑誌が、原告商品を含むエピ・シリーズ等の原告が製造、販売する商品について、特集記事を組み、あるいは記事を掲載している。

平成三年 鎌倉書房発行「マダム」九月号(甲一五の1・2)

講談社発行「ヴィヴィ」一〇月号(甲一四の1・2)

平成四年 集英社発行「シュプール」七月号(甲一六の1・2)

講談社発行「ウィズ」九月号(甲一七)

平成五年 小学館発行「オッジ」四月号(甲一〇の1・2)

世界文化社発行「ミス家庭画報」四月号(甲九の1・2)

「ウィズ」四月号(甲一一の1・2)

学習研究社発行「ラ・セーヌ」五月号(甲一九の1・2)

ワールド フォト・プレス社発行「月刊ビジオ・モノ女性版」六月号(甲八)

「オッジ」七月号(甲四の1・2)

婦人画報社発行「婦人画報」八月号(甲七の1・2)

小学館発行「キャンキャン」一〇月号(甲三の1・2)

流行通信社発行「流行通信」一一月号(甲六の1・2)

講談社発行「フラウ」一二月号(甲五の1・2)

講談社発行「ソフィア」一二月号(甲一二)

平成六年 「ヴィヴィ」三月号(甲一八の1・2)

集英社発行「モア」五月号(甲一三の1・2)

光文社発行「ジェイジェイ」七月号付録(甲一の1・2)

学習研究社発行「ル・クール」一二月号(甲二の1・2)

平成七年 「ヴィヴィ」一〇月号付録(甲二〇の1・2)

平成八年 「キャンキャン」四月号(甲二一の1・2)

「ジェイジェイ」四月号付録(甲二二の1・2)

講談社発行「グラツィア」四月号(甲三七の1~3)

婦人画報社発行「ヴァンサンカン」五月号(甲三二の1~3)

婦人画報社発行「ラ・ヴィ・ドウ・トランタン」七月号(甲四〇の1~3)

「グラツィア」七月号(甲三八の1~3)

「ラ・セーヌ」七月号(甲三九の1~3)

「ラ・ヴィ・ドウ・トランタン」八月号(甲四一の1~3)

一一月号(甲三五の1~5)

世界文化社発行「家庭画報」一二月号(甲三三の1~3)

平成九年 「グラツィア」一月号(甲三六の1~3)、二月号(甲三〇の1~3)

「オッジ」三月号(甲三一の1~5)

婦人画報社発行「エム・シー・シスター」五月号(甲三四の1~3)

(三) 右(二)記載の雑誌の記事において、原告商品が次のとおり繰り返し取り上げられており、その写真が掲載されている。

(1) 原告商品(一)

「オッジ」平成五年四月号(甲一〇の1)

「ウィズ」平成五年四月号(甲一一の1)

「月刊ビジオ・モノ女性版」平成五年六月号(甲八)「キャンキャン」平成五年一〇月号(甲三の1)

「ヴィヴィ」平成六年三月号(甲一八の1)

「モア」平成六年五月号(甲一三の1)

「ジェイジェイ」平成六年七月号付録(甲一の1・2)

「ヴィヴィ」平成七年一〇月号付録(甲二〇の1)

「キャンキャン」平成八年四月号(甲二一の1)

「ジェイジェイ」平成八年四月号付録(甲二二の1・2)

「ラ・ヴィ・ドゥ・トランタン」平成八年七月号(甲四〇の2)

「グラツィア」平成八年七月号(甲三八の2)

「ラ・ヴィ・ドゥ・トランタン」平成八年一一月号(甲三五の3)

(2) 原告商品(二)

「ヴィヴィ」平成三年一〇月号(甲一四の1)

「キャンキャン」平成五年一〇月号(甲三の1)

「ジェイジェイ」平成六年七月号付録(甲一の1)

「キャンキャン」平成八年四月号(甲二一の1)

「ジェイジェイ」平成八年四月号付録(甲二二の1)

(3) 原告商品(三)

「ヴィヴィ」平成三年一〇月号(甲一四の1)

「キャンキャン」平成五年一〇月一号(甲三の1)

「ソフィア」平成五年一二月号(甲一二)

「ジェイジェイ」平成六年七月号付録(甲一の1)

「ヴィヴィ」平成七年一〇月号付録(甲二〇の1・2)「キャンキャン」平成八年四月号(甲二一の1)

「ジェイジェイ」平成八年四月号付録(甲二二の1)

(4) 原告商品(四)

「ウィズ」平成四年九月号(甲一七)

「オッジ」平成五年七月号(甲四の1)

「キャンキャン」平成五年一〇月号(甲三の1)

「ヴィヴィ」平成六年三月号(甲一八の1)

「ジェイジェイ」平成六年七月号付録(甲一の1)

「ヴィヴィ」平成七年一〇月号付録(甲二〇の1・2)

「キャンキャン」平成八年四月号(甲二一の1)

「ジェイジェイ」平成八年四月号付録(甲二二の1)

「グラツィア」平成八年四月号(甲三七の2)

(5) 原告商品(五)

「ヴィヴィ」平成七年一〇月号付録(甲二〇の1)

「キャンキャン」平成八年四月号(甲二一の1)

「ヴァンサンカン」平成八年五月号(甲三二の2)

(6) 原告商品(六)

「マダム」平成三年九月号(甲一五の1)

「シュプール」平成四年七月号(甲一六の1)

「キャンキャン」平成五年一〇月号(甲三の1)

「ヴィヴィ」平成六年三月号(甲一八の1)

「ジェイジェイ」平成六年七月号付録(甲一の1)

「ヴィヴィ」平成七年一〇月号付録(甲二〇の1)

「キャンキャン」平成八年四月号(甲二一の1)

「ジェイジェイ」平成八年四月号付録(甲二二の1)

(四) 右(二)記載の雑誌のうち、「キャンキャン」平成五年一〇月号(甲三の1・2。平成五年一〇月一日発行と印刷されており、通常、月刊雑誌は発行日として印刷された日の一か月程度前に現実に発行されるので、同年九月初め頃に発行されたものと推認される)の記事は、原告商品(一)の写真を大きく掲載した「ルイ・ヴィトンのエピすべて見せます」と題する特集記事であり、「みんなと同じじゃイヤという人のための こだわりエピ」との見出しのもとに原告商品(三)、(四)、「飽きがこないから、長く愛し続けられる スタンダードエピ」との見出しのもとに原告商品(四)、(六)、「newcolor Tassili Yellow LOUIS VUITTON EPI」との見出しのもとに原告商品(一)、(四)が掲載されている。

「ジェイジェイ」平成六年七月号付録(甲一の1・2。前同様、同年六月初め頃に発行されたものと推認される)は、表紙に原告商品(一)の写真を大きく掲載した「エピ・モノグラム・タイガ・オペラほとんど全て紹介します いつだってルイ・ヴィトン」と題する小冊子であり、「売れ行きが証明している、買って後悔しないロング&ベストセラー7点」との見出しのもとに原告商品(一)が愛用している読者三名の顔写真及び簡単なコメント付きで掲載され、「色だけでなく、デザインの美しさも見逃せないエピ・レザーのバッグ」との見出しのもとに原告商品(二)、(三)、(四)、「オペラ、タイガラインまで知っていれば、もうヴィトンフリークといえる」との見出しのもとに原告商品(一)、(六)が掲載されている。

「ヴィヴィ」平成七年一〇月号付録(甲二〇の1・2。前同様、同年九月初め頃に発行されたものと推認される)は、「EPI&MONOGRAM大研究 もう1コヴィトン 読者投票NO1 BOOK」と題する小冊子であり、「1000人のViVi読者が選ぶ、『私の一番好きなヴィトン』ベスト20!」との見出しのもとに読者一〇〇〇人のアンケート調査を集計した結果が発表され、原告商品(一)は二位、原告商品(三)は一八位、原告商品(四)は一一位、原告商品(五)は八位、原告商品(六)は一三位とされ、それぞれの商品を愛用している読者の顔写真及び簡単なコメント付きで掲載されている。

「キャンキャン」平成八年四月号(甲二一の1・2。前同様、同年三月初め頃に発行されたものと推認される)の記事は、「愛しています!ルイ・ヴィトン モノグラムのカタログ、エピのカタログ、バッグから小物まで人気商品60点登場!パリ本店の協力を得て、ここまでできました」と題する特集記事であり、原告商品(一)、(二)、(四)、(五)、(六)の全体写真、正面、側面及び上面開口部を開けた上面からの写真の計四枚の写真がセットで掲載され、また、「カラーバリエが豊富なエピは、自分の服の傾向に合わせて色を選択。小物も揃えられるのが魅力」との見出しのもとに、原告商品のすべてが、それぞれ愛用している読者がこれを携帯しているところの写真として読者の簡単なコメント付きで掲載され、「読者に聞いた『これから欲しい』エピBest5」として、原告商品(一)が一位に、原告商品(三)が三位に挙げられている。

「ジェイジェイ」平成八年四月号付録(甲二二の1・2。前同様、同年三月初め頃に発行されたものと推認される)は、「史上最強のヴィトンBOOK」と題する小冊子であり、「L.A.なら買える!ブティック全ガイド」との見出しのもとに、原告が製造、販売する商品を取り扱う「SAKS FIFTH AVENUE SHOP(ビバリーヒルズ)」「RODEO DRIVE SHOP(ビバリーヒルズ)」「SOUTH COAST PLAZA SHOP(コスタ・メサ)」「SAKS FIFTH AVENUE SHOP(コスタ・メサ)」「CAESARS FORUM SHOP(ラスヴェガス)」「The Fashion Show Mall SHOP(ラスヴェガス)」という米国ロサンゼルス及びその近郊の六店の住所、電話番号、営業日、営業時間、日本語のできる店員の有無・人数を表示した上、各店における売れ行きの良い商品のベスト5及びロングセラー商品が掲載されており、これによれば、原告商品(一)は「SAKS FIFTH AVENUE SHOP(コスタ・メサ)」「The Fashion Show Mall SHOP(ラスヴェガス)」で五位、原告商品(三)は「SAKS FIFTH AVENUE SHOP(ビバリーヒルズ)」で四位、原告商品(四)は「SAKS FIFTH AVENUE SHOP(ビバリーヒルズ)」で三位、日本人観光客が多い「RODEO DRIVE SHOP(ビバリーヒルズ)」で四位、「SAKS FIFTH AVENUE SHOP(コスタ・メサ)」で四位、「CAESARS FORUM SHOP(ラスヴェガス)」でロングセラー商品、原告商品(六)は「CAESARS FORUM SHOP(ラスヴェガス)」でロングセラー商品とされ、そのほか、「キャンパスで必要なのは教科書もノートもいっぱい入る元気な大型バック」との見出しのもとに、原告商品(二)、(三)、(五)が掲載されている(但し、原告商品(五)は、モノグラム・シリーズのものの写真が掲載され、エピ・シリーズのものもある旨記載されている)。

3  右1及び2認定の事実及び第二の一1の事実によれば、(1)原告商品は、いずれも女性用の鞄類であり、極めて堅牢なファッション性に富む高級な鞄類、袋物類を製造、販売するものとして世界的に著名な原告が一九八六年(昭和六一年)から売り出した、麦の穂を図案化したものを型押ししたシボ状型押し模様の牛革(エピ生地)を使用した「エピ・シリーズ(エピ・ライン)」の商品として、原告商品(一)及び(四)が平成五年四月から、原告商品(二)及び(六)が平成五年四月以前から、原告商品(三)が平成六年一一月から、原告商品(五)が平成七年四月から、原告の日本における子会社の直営店六店及び特約店二八店においてのみ日本国内で販売されているものであり、本件全証拠によるも、他の業者によってエピ生地を使用している点を含めた前記1の(一)ないし(六)認定の各形態に類似した形態の鞄類が製造、販売されていたとの事実は認められないから、原告商品の各形態は、他の業者の鞄類と識別できるだけの特徴を有しているということができるところ、(2)原告自身が原告商品の広告宣伝をしていることは推認するに難くないのみならず、女性を購読者層とする雑誌が、平成三年二誌(二回)、平成四年二誌(二回)、平成五年一〇誌(一一回)、平成六年四誌(四回)、平成七年一誌(一回)、平成八年七誌(一〇回)、平成九年三誌(四回)というように、原告商品を含むエピ・シリーズ等の原告が製造、販売する商品について、特集記事を組み、あるいは記事を掲載しており、その記事において、原告商品が繰り返し取り上げられ写真が掲載されており、(3)なかでも、<1>「キャンキャン」平成五年一〇月号(甲三の1・2)の記事は、原告商品(一)の写真を大きく掲載した「ルイ・ヴィトンのエピすべて見せます」と題する特集記事であり、「こだわりエピ」、「スタンダードエピ」あるいは「LOUIS VUITTON EPI」との見出しのもとに原告商品(一)、(三)、(四)、(六)が掲載され、<2>「ジェイジェイ」平成六年七月号付録(甲一の1・2)は、表紙に原告商品(一)の写真を大きく掲載した「エピ・モノグラム・タイガ・オペラほとんど全て紹介します いつだってルイ・ヴィトン」と題する小冊子であり、「売れ行きが証明している、買って後悔しないロング&ベストセラー7点」との見出しのもとに原告商品(一)が愛用している読者三名の顔写真及び簡単なコメント付で掲載され、「エピ・レザーのバッグ」等の見出しのもとに原告商品(一)、(二)、(三)、(四)、(六)が掲載され、<3>「ヴィヴィ」平成七年一〇月号付録(甲二〇の1・2)は、「EPI&MONOGRAM大研究 もう1コヴィトン 読者投票NO1 BOOK」と題する小冊子であり、「1000人のViVi読者が選ぶ、『私の一番好きなヴィトン』ベスト20!」との見出しのもとに読者一〇〇〇人のアンケート調査を集計した結果が発表され、原告商品(一)は二位、原告商品(三)は一八位、原告商品(四)は一一位、原告商品(五)は八位、原告商品(六)は一三位とされ、それぞれの商品を愛用している読者の顔写真及び簡単なコメント付きで掲載され、<4>「キャンキャン」平成八年四月号(甲二一の1・2)の記事は、「愛しています!ルイ・ヴィトン モノグラムのカタログ、エピのカタログ、バッグから小物まで人気商品60点登場! パリ本店の協力を得て、ここまでできました」と題する特集記事であり、原告商品(一)、(二)、(四)、(五)、(六)の全体写真、正面、側面及び上面開口部を開けた上面からの写真の計四枚の写真がセットで掲載され、また、「カラーバリエが豊富なエピ」との見出しのもとに、原告商品のすべてが、それぞれ愛用している読者がこれを携帯しているところの写真として読者の簡単なコメント付きで掲載され、「読者に聞いた『これから欲しい』エピBest5」として、原告商品(一)が一位に、原告商品(三)が三位に挙げられ、<5>「ジェイジェイ」平成八年四月号付録(甲二二の1・2)は、「史上最強のヴィトンBOOK」と題する小冊子であり、米国ロサンゼルス及びその近郊の六店における売れ行きの良い商品あるいはロングセラー商品として原告商品(一)、(三)、(四)、(六)が掲載されているのであって、これらの記事は、それ自体が原告商品の各形態を需要者に広く認識させる広告宣伝の役割を果たすとともに、原告商品の各形態が需要者に広く認識されている結果を示すものということができるから、前記冒頭の説示に照らし、原告商品の各形態は、遅くとも被告國田が被告商品の輸入を始めた平成七年九月には、その需要者の間において、原告の商品であることを示す出所表示機能を取得し、広く認識されるに至っていたものと認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

被告らは、原告商品の各形態は、いずれも鞄としてごくありふれたものであり、独自性を有しないから、不正競争防止法二条一項一号にいう「他人の商品等表示」には該当しないし、仮に原告商品の各形態が出所表示機能を有するとしても、原告主張の販売開始時期からして、周知性を取得しているとはいえない旨主張する。

確かに、鞄は、物を入れて持ち運ぶという本来の機能から、基本的に物を入れる本体部分と持ち手や肩掛けの部分とで構成されるが、そのような鞄の機能から材質や柄を含めたデザイン、大きさが必然的に決まるということはできず、右基本的な構成の中で各種各様に選択されるのであって、本件全証拠によるも、原告商品の各形態が鞄としてごくありふれたものであるとは認められない。商品の形態が出所表示機能を取得し、周知性を取得するためには、当該形態の商品が長期間にわたって独占的に販売されることが必要な場合が多いが、必ずしも販売開始時期から長期間を経過することを要するとは限らないのであって、前示のとおり短期間でも強力に広告宣伝がなされることなどにより商品の形態が出所表示機能を取得し、周知性を取得することは十分ありうるのであり、原告商品の各形態はこの場合に当たるのである。

また、被告らは、商品の模様には本来商品表示性はなく、他メーカーも同様のシボ状型押し模様の皮革を用いた商品を販売していることから明らかなように、シボ状型押し模様は「単なる」地模様に外ならないから、このようなシボ状型押し模様に商品表示性はない旨主張するが、商品の模様は、本来的な商品表示ではないにしても、商品形態の一部として商品表示を構成することがありうるのであり、本件全証拠によるも、原告以外の他メーカーが原告商品と同様のシボ状型押し模様の皮革を用いた鞄類を製造、販売しているとの事実が認められないのみならず、単に右のシボ状型押し模様(エピ生地)だけをもってこれが商品表示性、周知性を取得していると認定したわけではなく、前記1の(一)ないし(六)認定の各形態をもってこれが商品表示性、周知性を取得していると認定したものである。

二  争点1(二)(被告商品は、その各形態により原告商品との誤認混同を生じさせるものであるか)について

1  イ号目録ないしへ号目録、証拠(各項掲記のもの)及び弁論の全趣旨によれば、被告商品の各形態は、次のとおりであると認められる。

(一) イ号商品(検甲三、四)

(1) 正面及び背面を構成する略扇形状の皮革片二枚、側面を構成する略矩形状の皮革片二枚、底面を構成する楕円形の皮革片一枚、帯状の長い皮革片一枚、ファスナー及び二本の肩掛け紐からなり、正面、背面及び底面を構成する各皮革片には、シボ状の型押し模様が付されている。

(2) 正面及び背面は、側縁が底辺において小さく上方に向かってゆるやかな円弧状をなして広がり、上縁がゆるやかな円弧状をなしている略扇形状であり、下端部全周に帯状の長い皮革片が底辺と同周に縫合されている。

(3) 各側面は、略矩形状の皮革片が底面方向にタックをとって、正面、背面及び底面を構成する各皮革片にそれぞれ縫合され、上方に広い略V字形の襠部を形成している。

(4) 底面は楕円状をなし、上面は全長にわたってファスナーが縫着されている。

(5) 略扇形状の正面及び背面の上方部分に、各先端が矢じり状の肩掛け紐が各一本装着されている。

(6) 大きさは、横幅四五・五cm、高さ三〇・五cm、奥行き一七・五cmである。

(二) ロ号商品(検甲七、八)

(1) 正面及び背面を構成する長方形の皮革片二枚、側面に縫合される細長い長方形の皮革片二枚、底面を構成する楕円形の皮革片一枚、一本の幅広の肩掛け紐、ベルト金具、ベルト通し、上面の開口部を絞る革紐、右紐通しの皮革板一枚からなり、正面、背面及び底面を構成する各皮革片には、シボ状の型押し模様が付されている。

(2) 正面及び背面は、上面の開口部より約六分の一下方の位置にそれぞれ鳩目穴が横に六か所設けられており、これに革紐が挿通され、紐には一枚の紐通し板が背面において嵌められている。上面開口部の開閉は、紐通し板の摺動により、紐を締めたり緩めたりすることにより行われ、閉めたときには、上部は三つ折れの襞状となり、各左右四か所の鳩目穴はこの襞によって隠れ、中央部の二か所の鳩目穴のみが顕れる。

(3) 各側面は、正面及び背面を構成する長方形の皮革片二枚の縫い目を隠すように細長い長方形の皮革が縫合されている。

(4) 底面は、楕円状をなしている。

(5) 肩掛け紐は、正面上縁に幅広に縫合され、肩山まで先細り状となり、肩山を境としてベルト状となって先端部にベルト穴が穿たれ、背面下端部中央に縫合されたベルト金具と契合し、ベルト通しに挿通されている。

(6) 大きさは、横幅三〇・五cm、高さ三六cm、奥行き一六cmである。

(三) ハ号商品(検甲一一、一二)

(1) 正面及び背面を構成する長方形の皮革片二枚、側面に縫合される細長い長方形の皮革片一枚、底面を構成する楕円形の皮革片一枚、帯状の皮革片一枚及び一本の幅広の肩掛け紐、ベルト金具、ベルト通しからなり、正面、背面及び底面を構成する各皮革片には、シボ状の型押し模様が付されている。

(2) 正面及び背面は、上面の開口部より約四分の一下方の位置に本体を一周する帯状の皮革片が縫合され、正面で開閉自在に打ち合わせられている。帯状の皮革片を打ち合わせて開口部を閉めたときは、上部が三つ折れの襞状となって、全体が縦長の略台形となる。

(3) 側面の一方は、正面及び背面を構成する長方形の皮革片二枚の縫い目を隠すように細長い長方形の皮革片が底辺から上方に上縁を越えて縫合され、その先端にベルト金具とベルト通しが取り付けられている。

(4) 底面は、楕円状をなしている。

(5) 肩掛け紐は、正面及び背面を構成する長方形の皮革片二枚の他方の側面における縫い目を隠すように底辺から縫合され、先端部にベルト穴が穿たれ、右(3)のベルト金具と契合し、ベルト通しに挿通されている。

(6) 大きさは、横幅二八・五cm、高さ三一・四cm、奥行き一四・四cmである。

(四) ニ号商品(検甲一五、一六)

(1) 正面、背面及び底面を構成する長方形の皮革片三枚、側面に縫合される細長い長方形の皮革片二枚、一本の幅広の肩掛け紐、D型金具二個、ベルト金具二個、ベルト通し四個及び上面の開口部を絞る革紐、右紐通しの皮革板一枚からなり、正面、背面及び底面を構成する各皮革片には、シボ状の型押し模様が付されている。

(2) 正面及び背面は、上面の開口部よりやや下方の位置にそれぞれ鳩目穴が横に六か所設けられており、これに革紐が挿通され、紐には一枚の紐通し板が正面において嵌められている。上面開口部の開閉は、紐通し板の摺動により、紐を締めたり緩めたりすることにより行われ、閉めたときには、上部は三つ折れの襞状となり、各左右四か所の鳩目穴はこの襞によって隠れ、中央部の二か所の鳩目穴のみが顕れる。

(3) 各側面は、正面及び背面を構成する長方形の皮革片二枚の縫い目を隠すように細長い長方形の皮革片が縫合されており、その上端部にD型金具が取り付けられている。

(4) 底面は、角を落とした略長方形をなしている。

(5) 肩掛け紐は、ベルト穴の穿たれた両端が右(3)の各側面上端部のD型金具に挿通されて折り返され、それぞれベルト金具と二個のベルト通しが設けられ、これにより長さの調節が自在となっている。

(6) 大きさは、横幅二五cm、高さ二七cm、奥行き一七・五cmである。

(五) ホ号商品(検甲一八、二〇)

(1) 正面及び背面を構成する長方形の皮革片二枚、正面及び背面に縫合される細長い長方形の皮革片六枚、底面を構成する小判型の皮革片一枚、胴部下端全周に縫合されるやや細長い長方形の皮革片二枚、肩掛け兼用の上面開口部を絞る革紐一本、D型金具一個、ベルト金具一個、ベルト通し一個、開口部引締め用輪状の皮革片一個からなり、正面、背面及び底面を構成する各皮革片には、シボ状の型押し模様が付されている。

(2) 正面及び背面は、各三本の細長い長方形の皮革片が底辺から上方に上縁を越えて縫合され、開口部において折り返されてそれぞれ輪を形成し、その輪に肩掛け兼用の上面開口部を絞る革紐が挿通され、この革紐は、更に、背面下端部中央に設けられたD型金具に挿通されて折り返され、ベルト金具、ベルト通しを介して連結されて輪状のベルト部を形成している。上面開口部の開閉は、開口部引締め用輪状の皮革片の摺動により、革紐を締めたり緩めたりすることによって行われる。

(3) 胴部の下端全周に、やや細長い長方形の皮革片二枚が底辺と同周に縫合されている。

(4) 底面は、小判型をしている。

(5) 正面から見たときの横幅と高さの比は、一対一・四五である。

(六) ヘ号商品(検甲二三、二四)

(1) 正面及び背面を構成する長方形の皮革片二枚、底面を構成する長方形の皮革片一枚、底面に縫合される帯状の皮革片一枚、側面を構成する上部はアーチ型で下部は角形状の皮革片二枚、側面に縫合される丸味を帯びた略三角形の皮革片二枚、側面の一方に縫合されるポケツト用の略正方形の皮革片一枚、二本の持ち手、D型金具と略五角形の皮革片各四個、フアスナーからなる。正面、背面及び側面を構成する各皮革片には、シボ状の型押し模様が付されている。

(2) 正面及び背面は長方形で、側面は上部がアーチ型で下端が角形状であり、全体的形状はいわゆる蒲鉾型状の背を高くしたような形状である。正面及び背面の上部に、持ち手がD型金具を介して略五角形の皮革片と一体なっとて縫合されている。

(3) 各側面の上部アーチ型の頂点に丸味を帯びた略三角形の皮革片が縫合され、また、側面の一方には、略正方形の皮革片が縫合されてポケットを形成している。

(4) 底面は長方形をなしており、中央部を横断して帯状の皮革片一枚が縫合されている。

(5) 上面の全長にわたってファスナーが縫着されている。

(6) 大きさは、横幅三七cm、高さ二四cm、奥行き一九・五cmである。

2  被告商品の各形態は右1認定のとおりであるところ、これを前示のとおり原告の商品表示として周知性を取得している前記一1の(一)ないし(六)認定の原告商品の各形態と対比すると、イ号商品は原告商品(一)に比べて横幅、高さ、奥行きが〇・五cm大きい、ロ号商品は原告商品(二)に比べて横幅が〇・五cm、奥行きが一cm大きい、ハ号商品は原告商品(三)に比べて横幅が一・五cm、高さが一・四cm、奥行きが〇・四cm大きい、ニ号商品は原告商品(四)に比べて横幅が一cm大きく、奥行きが〇・五cm小さい、正面から見たときの横幅と高さの比が原告商品(五)では一対一・三九であるのに対し、ホ号商品では一対一・四五である、ヘ号商品は原告商品(六)に比べて横幅が二cm、高さが一cm、奥行きが一・五cm大きいという点、及び上面開口部の構造が、原告商品(四)では、六か所の鳩目穴に挿通された革紐を結んだり解いたりするものであるのに対し、ニ号商品では六か所の鳩目穴に挿通された革紐に紐通し板が嵌められており、紐通し板の摺動により紐を締めたり緩めたりするものであるという点が相違するものの、その他の点は同一であり、右の大きさ及び横幅と高さの比の差異は、極めて小さいものであって同一といっても差し支えのない程度のものであり、原告商品(四)とニ号商品における上面開口部の構造の差異も、両方を並べて観察してはじめて気がつく程度の些細なものであるから、イ号商品は原告商品(一)と、ロ号商品は原告商品(二)と、ハ号商品は原告商品(三)と、ニ号商品は原告商品(四)と、ホ号商品は原告商品(五)と、ヘ号商品は原告商品(六)とそれぞれ同一といってよいほど形態が酷似しており、これによりそれぞれ原告商品との誤認混同を生じるものであることが明らかである。

被告らは、平成七年一一月九日から平成八年一月二〇日まで日刊紙に通算一五回の通信販売の広告を掲載して被告商品を販売したところ(乙一ないし一五)、その際、「ルイ・ヴィトン」という表示は一切使用せず、「コルムナ・エピラインタウン用バック〇〇タイプ」という表題のもとにイタリアのサパフ社が製造したものであることを記載しており、販売価格も、原告商品の販売価格(九万〇六四〇円ないし一三万二〇〇〇円)に対し、希望小売価格七万二〇〇〇円であるところ二万九八〇〇円であること、コピー商品が市場に氾濫している現況下においては、需要者は「ルイ・ヴィトン」の商品であるか否か購入時に細部にわたり検討するのが常識であり、そうであれば、被告商品と原告商品との差異は一目瞭然であることからして、需要者が被告商品をもって原告の商品であると誤認混同するおそれはいかなる意味においてもありえない旨主張する。

証拠(甲二三、二四の1・2、乙一ないし一五)及び弁論の全趣旨によれば、被告会社は、平成七年一一月九日付中日スポーツ新聞、平成七年一一月九日付・一〇日付・一七日付・二三日付・同年一二月二日付・一四日付・一六日付各読売新聞、平成七年一一月二九日付・同年一二月三日付・九日付・二一日付・平成八年一月一二日付各産経新聞、平成七年一二月七日付報知新聞、平成八年一月四日付日刊スポーツ新聞、平成八年一月二〇日付毎日新聞にそれぞれ被告商品をいずれも二万九八〇〇円で通信販売の方法により販売する旨の広告を掲載し、また、平成八年二月には、新店舗(大阪市西区新町二丁目一二-九)を開設し、「通販でおなじみのアレンジが新店舗オープン!!

オープン記念セール」と銘打って被告商品をいずれも二万八八〇〇円で販売する旨の折り込み広告をしたこと、右の新聞広告には、被告商品の全体写真が掲載され、「イタリア製 大人気のエピライン コルムナ/エピライン タウン用バッグ」、「人気のエピデザインに完ペキな仕上がり コルムナ/エピラインタウン用バッグ」あるいは「イタリア製・大人気のエピ仕上げ」との見出しのもとに、「MADE IN ITALY」、「イタリアの『サパフ社』製で、この会社はセリーヌ等のヨーロッパ有名ブランドバッグの製造メーカーです。おしゃれなデザインに完ペキな仕上り。色はブラック・ブルー・イエロー・レッドの4種類。素材はイタリアカーフに人気のエピライン。」と印刷され、イ号商品は「サン・ジヤツク タイプ」、ロ号商品は「サック・ドア タイプ」、ハ号商品は「サック・デポールタイプ」、ニ号商品は「プチ・ノエ・タイプ」、ホ号商品は「ランドネ タイプ」、ヘ号商品は「スピーデイ タイプ」との名称が付されていること、また、右折り込み広告には、被告商品の全体写真が掲載され、「MADE IN ITALY」、「コルムナ エピラインタウン用バッグ」と印刷されていることが認められる。このように、被告商品についての新聞広告あるいは折り込み広告には、被告商品の全体写真が掲載されている外に、「コルムナ」の名称や、イタリアのサパフ社製あるいはイタリア製であり、その販売価格が二万九八〇〇円あるいは二万八八〇〇円であることが明記されているが、本件全証拠によるも、右広告の当時、「コルムナ」の名称が日本国内においてブランド名として広く認識されていたとは認められず、前記一3認定のとおり、当時既に原告商品の各形態が原告の商品表示として周知性を取得していただけでなく、前記一1及び2認定の事実によれば、原告商品が属する商品群の名称である「エピ・シリーズ(エピライン)」との名称も原告の商品を示す商品表示として周知性を取得していたというべきところ(被告ら主張のように「エピ」がフランス語で「穂」という普通名詞であるとしても、本件全証拠によるも、他メーカーが原告商品と同様のシボ状型押し模様の皮革を用いた鞄類を製造、販売しているとの事実も、「エピ」との名称を使用しているとの事実も認められない)、右広告においては「大人気のエピライン」、「人気のエピデザイン」あるいは「大人気のエピ仕上げ」というように被告商品について「エピ」の名称を強調しており、更に、被告商品には原告商品の各商品名に「タイプ」を付けただけの名称が付されている(但し、ロ号商品については、なぜか原告商品(二)の商品名「サック・ア・ド」に対して「サック・ドア タイプ」の名称が付されている)ことに照らせば、被告商品について右のように「コルムナ」の名称やサパフ社製あるいはイタリア製であることが明記され、販売価格が後記三2(一)(3)認定の原告商品の販売価格に比べて大幅に安いことは、被告商品の各形態が原告商品の各形態と酷似していることにより原告商品との誤認混同を生じるとの前記認定を何ら左右するものではない。被告らは、コピー商品が市場に氾濫している現況下においては、需要者は、「ルイ・ヴィトン」の商品であるか否か購入時に細部にわたり検討するのが常識であり、そうであれば、被告商品と原告商品との差異は一目瞭然であるというのであるが、需要者は、購入時に被告商品と原告商品とを並べて対比して検討する機会が与えられるわけではないだけでなく、検甲第一ないし第二四号証によれば、仮に被告商品と原告商品とを並べて対比して検討しても、その形態上の差異を見出すのは極めて困難であると認められるから、到底、被告商品と原告商品との差異は一目瞭然であるとはいえない。

したがって、被告國田が被告商品を輸入、販売し、被告会社が被告商品を被告國田から仕入れて販売する行為は、いずれも不正競争防止法二条一項一号の不正競争に当たることが明らかである。

そうすると、不正競争防止法三条に基づき、被告会社に対し被告商品の製造、販売、販売のための展示の差止めを、被告國田に対し被告商品の輸入、販売、販売のための展示の差止めを求めるとともに、被告らに対し被告商品の廃棄を求める原告の請求は理由があるというべきである(被告会社が現に被告商品を製造しているとの事実を認めるに足りる証拠はないが、本件訴訟における応訴態度等に照らし、自ら又は第三者に委託して被告商品を製造するおそれがあるものと認められる)。

また、被告商品の各形態が原告の商品表示として周知性を取得している原告商品の各形態と同一といってよいほど酷似していること、被告商品の広告において「エピ」の名称を強調し、原告商品の各商品名に「タイプ」をつけただけの名称を付していることに照らせば、被告らには右不正競争行為につき故意のあつたことが明らかであり、右行為によって原告の営業の利益を侵害したと認められるから、被告らは、同法四条に基づき、原告に対してそれぞれ右行為によって生じた損害を賠償すべき責任を負うということになる。

三  争点3(被告らが原告に対して損害賠償責任を負う場合に賠償すべき損害の額)について

1  被告会社の賠償すべき損害の額

(一) 被告会社が被告國田から被告商品を五二個仕入れて販売したことは当事者間に争いがないところ、被告会社の賠償すべき損害の額について、原告は、第一次的に、不正競争防止法四条自体に基づき、原告は、被告会社の行為によって被告商品に対応する原告商品五二個を販売する機会を失ったから、原告が原告商品を販売すれば得られたであろう販売利益が原告の損害となると主張するが、被告商品の販売価格が後記2(一)(3)認定の原告商品の販売価格に比べて大幅に安いことに照らし、被告商品が販売されていなければその分だけこれに対応する原告商品を販売することができたであろうとは考え難く、他にこれを認めるに足りる証拠はないから、右主張は理由がない。

原告は、第二次的に、不正競争防止法四条、五条一項に基づく主張をするところ、証拠(乙一六の1・2、二一の1~4)及び弁論の全趣旨によれば、被告会社が被告國田から被告商品を仕入れた価格は一個一万七〇〇〇円、販売価格は一個二万九八〇〇円であることが認められるから、被告会社は、被告商品を合計五二個販売したことにより、六六万五六〇〇円〔(二万九八〇〇円-一万七〇〇〇円)×五二個)の利益を得たものと認められる。

右利益の額は、不正競争防止法五条一項により、被告会社の行為によつて原告の被った損害の額と推定される。なお、被告会社は、被告商品の通信販売のため、延べ一五回にわたり読売新聞、産経新聞、毎日新聞等の一流日刊紙上に相当大きなカラー広告を掲載しており、広告費用だけでも大幅な欠損が生じているから、不正競争防止法五条一項により原告の受けた損害の額と推定される利益は存しないと主張するが、その広告費用の具体的な額についての主張立証がない。

(二) 被告会社に対する第一事件の訴訟追行のための弁護士費用の損害は、右認定の損害額や訴訟の難易、経緯等を考慮して一〇万円と認めるのが相当である。

(三) 以上によれば、被告会社は、原告に対し、右(一)及び(二)の合計額である七六万五六〇〇円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成八年三月六日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払うべき義務を負うといわなければならない。

2  被告國田の賠償すべき損害の額

(一) 被告國田が、平成七年九月から一一月頃までの間、イタリアのサパフ社から被告商品を九五〇個(そのうち五一〇個は株式会社アーミン名義で)輸入し、その輸入価格が一個当たりイ号商品一万二二〇〇円、ロ号商品一万二九八六円以下、ハ号商品一万〇九二〇円、ニ号商品一万一三七二円以下、ホ号商品一万三三二五円、ヘ号商品一万四二三二円以下であったこと、被告國田が平成七年一〇月初めから平成八年九月末までの間に、被告商品を被告会社に対して五五個、株式会社アーミンに対して一五〇個、それ以外の者に対して残り七四五個販売したことは、当事者間に争いがない。

(1) 証拠(甲二三、乙二一の1~4)によれば、被告國田は、被告会社に対して被告商品五五個(イ号商品八個、ロ号商品一三個、ハ号商品八個、ニ号商品一三個、ホ号商品六個、ヘ号商品七個)をいずれも一個一万七〇〇〇円で販売したことが認められるから、これにより二五万三八一二円〔(一万七〇〇〇円-一万二二〇〇円)×八個+(一万七〇〇〇円-一万二九八六円)×一三個+(一万七〇〇〇円-一万〇九二〇円)×八個+(一万七〇〇〇円-一万一三七二円)×一三個+(一万七〇〇〇円-一万三三二五円)×六個+(一万七〇〇〇円-一万四二三二円)×七個〕の利益を得たものと認められる。

右利益の額は、不正競争防止法五条一項により、被告國田の行為によって原告の被った損害の額と推定される。

(2) 証拠(甲二三、乙一七)によれば、被告國田は、株式会社アーミンに対してイ号商品を一万六五八九円、ロ号商品を一万六九七五円、ハ号商品を一万六一六〇円、ニ号商品を一万五一九九円、ホ号商品を一万六一六〇円、ヘ号商品を一万八三四七円で各二五個(合計一五〇個)販売したことが認められるから、これにより六〇万九八七五円〔(一万六五八九円-一万二二〇〇円)×二五個+(一万六九七五円-一万二九八六円)×二五個+(一万六一六〇円-一万〇九二〇円)×二五個+(一万五一九九円-一万一三七二円)×二五個+(一万六一六〇円-一万三三二五円)×二五個+(一万八三四七円-一万四二三二円)×二五個〕の利益を得たものと認められる。

右利益の額は、不正競争防止法五条一項により、被告國田の行為によって原告の被った損害の額と推定される。

(3) 被告國田が残り七四五個の被告商品を被告会社及び株式会社アーミン以外の者に販売したことによる損害について、原告は、第一次的に、不正競争防止法四条自体に基づき、原告は、被告國田の行為によって被告商品に対応する原告商品を販売する機会を失ったから、原告が原告商品を販売すれば得られたであろう販売利益が原告の損害となると主張するが、前記1(一)説示のとおり、被告商品が販売されていなければその分だけこれに対応する原告商品を販売することができたであろうとは考え難く、他にこれを認めるに足りる証拠はないから、右主張は理由がない。

そこで、原告が第二次的に主張する同法四条、五条二項に基づく「当該侵害に係る商品等表示の使用」に対し「通常受けるべき金銭の額に相当する額」について検討する。

前示のとおり、原告は、極めて堅牢なファッション性に富む高級な鞄類、袋物類を製造、販売するものとして世界的に著名であり、原告商品は、フランス国内で製造し(原告の製品は、いずれもライセンス契約による日本等での製造はしていない)、日本国内では原告の日本における子会社の直営店六店及び特約店二八店においてのみ販売し、品質の保持管理、商品及び商品表示の信用維持に努めているのであって、前記一2認定の事実によれば原告商品は原告の製品の中でも日本国内における人気商品であることが明らかであるところ、右のとおり原告はライセンス契約による日本等での製造はしていないが、もし仮に原告の商品表示として周知性を取得している原告商品の各形態と同一の形態を有する商品の製造販売を許諾するとすれば、当然、品質の保持管理、商品及び商品表示の信用維持のため、使用する皮革の質、縫製方法、各部品、販売方法等について原告が原告商品を製造、販売する場合と同等であることを条件とするものと考えられ、その結果、その製造販売に要する費用も原告商品の場合と同程度となり、したがって販売価格も原告商品と同程度になるものと考えられるから、右「通常受けるべき金銭の額」の算定に当たっては、原告商品の各販売価格を基準としなければならない。被告國田は、不正競争防止法五条二項所定の許諾料算定の基準は、被告商品の販売価格に求めるべきであると主張するが、前記のとおり、被告商品一個当たりの輸入価格は、イ号商品が一万二二〇〇円、ロ号商品が一万二九八六円以下、ハ号商品が一万〇九二〇円、ニ号商品が一万一三七二円以下、ホ号商品が一万三三二五円、ヘ号商品が一万四二三二円以下であり、証拠(乙一八の1~5)及び弁論の全趣旨によれば、被告國田は、被告会社及び株式会社アーミン以外の者に販売した七四五個の被告商品については、平成八年七月五日頃から同年八月二六日頃までの間に、いずれも一個五〇〇〇円で販売したものと認められるところ、原告が、輸入価格が右のような安価な製品について原告の商品表示として周知性を取得している原告商品の各形態と同一の形態の使用を許諾するとは到底考えられないし、まして、第一事件の訴えの提起(平成八年二月二七日)の後に右のような輸入価格の商品を五〇〇〇円といういわゆる「たたき売り」というべき価格で販売するような場合に使用を許諾することはありえないから、被告國田の主張は到底採用することができない。

そして、前示のとおり原告は、極めて堅牢なファッション性に富む高級な鞄類、袋物類を製造、販売するものとして世界的に著名であり、原告商品自体も原告の製品の中でも日本国内における人気商品であること等を考慮すれば、原告の商品表示として周知性を取得している原告商品の各形態の使用料は、原告商品の各販売価格の一〇%と認めるのが相当である。これに反する被告國田の主張は採用することができない。

しかして、証拠(甲二七の1・2)によれば、原告商品の各販売価格は、原告商品(一)が九万六〇〇〇円、原告商品(二)が一三万二〇〇〇円、原告商品(三)が九万六〇〇〇円、原告商品(四)が七万九〇〇〇円、原告商品(五)が一〇万四〇〇〇円、原告商品(六)が八万八〇〇〇円であることが認められるから、それぞれ、その形態の通常の使用料は、順に九六〇〇円、一万三二〇〇円、九六〇〇円、七九〇〇円、一万〇四〇〇円、八八〇〇円ということなる。そして、証拠(乙一八の1~5)によれば、前記七四五個のうち六七六個の内訳は、原告商品(一)に対応するイ号商品が一五〇個、原告商品(二)に対応するロ号商品が一四四個、原告商品(三)に対応するハ号商品が一〇一個、原告商品(四)に対応するニ号商品が六一個、原告商品(五)に対応するホ号商品が六六個、原告商品(六)に対応するヘ号商品が一五四個であることが認められるが、その余の六九個については内訳を認定できるだけの証拠が存しないので、右六七六個に占める割合で按分して個数を推定するのが相当であるから、このようにして推定した個数を加えると、イ号商品が一六五個、ロ号商品が一五九個、ハ号商品が一一一個、ニ号商品が六七個、ホ号商品が七三個、ヘ号商品が一七〇個ということになる。そうすると、原告商品の各形態の通常の使用料は、合計七五三万二九〇〇円(九六〇〇円×一六五個+一万三二〇〇円×一五九個+九六〇〇円×一一一個+七九〇〇円×六七個+一万〇四〇〇円×七三個+八八〇〇円×一七〇個)と認められる。

したがって、原告は、不正競争防止法五条二項一号に基づき、被告國田に対し、右七五三万二九〇〇円を、原告の商品表示として周知性を取得している原告商品の各形態の使用に対し「通常受けるべき金銭の額に相当する額」の金銭として請求することができるというべきである(右七五三万二九〇〇円という額は、原告が第二次的主張として賠償を求める金額(七一五万二〇〇〇円)を超えるが、第一次的主張として賠償を求める金額(一六四四万九六〇〇円)の範囲内にあるから、これを認容しても弁論主義に反するものではない)。

(二) 前示のとおり、原告は、極めて堅牢なファッション性に富む高級な鞄類、袋物類を製造、販売するものとして世界的に著名であり、原告商品は、フランス国内で製造し(原告の製品は、いずれもライセンス契約にょる日本等での製造はしていない)、日本国内では原告の日本における子会社の直営店六店及び特約店二八店においてのみ販売し、品質の保持管理、商品及び商品表示の信用維持に努めているのであって、原告商品は原告の製品の中でも日本国内における人気商品であるところ、被告國田は、原告の商品表示として周知性を取得している原告商品の各形態と同一といってよいほど酷似した形態の被告商品七四五個を、前記のとおりいわゆる「たたき売り」というべき価格で販売したものであるから、原告は、原告商品の持つ高級品としてのイメージを著しく低下させられ、これにより信用上の損害を被ったことが容易に推認でき、かかる無形の損害は、これを金銭に評価すると三〇〇万円と認めるのが相当である。

(三) 被告國田に対する第二事件の訴訟追行のための弁護士費用の損害は、右認定の損害額や訴訟の難易、経緯等を考慮して原告主張の五〇万円と認めるのが相当である。

(四) 以上によれば、被告國田は、原告に対し、右(一)の(1)の二五万三八一二円、(2)の六〇万九八七五円、(3)の七五三万二九〇〇円、(二)の三〇〇万円、(三)の五〇万円の合計額である一一八九万六五八七円、及びこれに対する請求拡張の申立書送達の日の翌日である平成九年九月三日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払うべき義務を負うといわなければならない。

3  損害賠償請求についてのまとめ

したがって、原告の被告らに対する損害賠償請求は、被告会社に対し右1(三)の七六万五六〇〇円と遅延損害金の支払を求め、被告國田に対し右2(四)の一一八九万六五八七円と遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がないということになる。

第五  結論

よって、主文のとおり判決する(被告商品の廃棄を命じる主文第三項については、相当でないから、仮執行の宣言を付さないこととする)。なお、不正競争防止法二条一項三号、三条、四条に基づく請求(争点2)については、その差止め・廃棄の請求は、前示のとおり同法二条一項一号、三条に基づく請求が認容され、かつ、本件では同法二条一項三号、三条に基づく請求が認容されるより原告にとって有利と考えられ、また、損害賠償請求は、たとえこれが認容されても、前記の同法二条一項一号、四条に基づく請求における認容額を超えるものとは認められないから、判断しない(平成九年一〇月一四日口頭弁論終結)。

(裁判長裁判官 水野武 裁判官 田中俊次 裁判官 小出啓子)

イ号目録(1)

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イ号目録(2)

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イ号目録(3)

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イ号目録(4)

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ロ号目録(1)

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ロ号目録(2)

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ロ号目録(3)

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ハ号目録(1)

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ハ号目録(2)

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ハ号目録(3)

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ニ号目録(1)

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ニ号目録(2)

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ニ号目録(3)

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ホ号目録(1)

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ホ号目録(2)

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ホ号目録(3)

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ヘ号目録(1)

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ヘ号目録(2)

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ヘ号目録(3)

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原告商品目録(一)(1)

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原告商品目録(一)(2)

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原告商品目録(一)(3)

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原告商品目録(一)(4)

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原告商品目録(二)(1)

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原告商品目録(二)(2)

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原告商品目録(二)(3)

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原告商品目録(三)(1)

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原告商品目録(三)(2)

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原告商品目録(三)(3)

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原告商品目録(四)(1)

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原告商品目録(四)(2)

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原告商品目録(四)(3)

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原告商品目録(五)(1)

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原告商品目録(五)(2)

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原告商品目録(五)(3)

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原告商品目録(六)(1)

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原告商品目録(六)(2)

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原告商品目録(六)(3)

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